作品ID:A349
クリエイター名:立川 6:00
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作品ID
クリエイター名
E297
和上 京鈴
ストーリー
E282
zoo
ストーリー
E201
紅石
ストーリー
E094
Neu
ストーリー
E075
伊瀬 ハヤテ
ストーリー
E028
猫衣 林薙
ストーリー
E014
憂井 ヨシノ
ストーリー
E002
安城 和城
ストーリー
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作品ID
クリエイター名
D267
薄夏 候
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D249
melon pan
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D204
hina
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D183
ONE★
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D016
彩羽
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D005
satori
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作品ID
クリエイター名
B057
七紙
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C064
七紙
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作品ID
クリエイター名
C064
七紙
歌詞
B057
七紙
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作品ID:
B057
クリエイター名:
七紙
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作品ID:
C064
クリエイター名:
七紙
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「リセマラララバイ」 私がこの先一体どうなるかは この一挙手一投足にかかっている そろそろおやすみ まったくどうかしてる 今、輪廻と輪廻が交互に絡まって 腫れ上がる負債を嫌った 無駄なもん分かっているんだろう? 自分だけ虚勢を計って笑ったって 人は人を蹴落とす魔物になって 何遍も生命を汚し作った理想抱いた 情状酌量も倫理も全部失くして 所詮生きようとした命は軽く住なされ(いなされ)ようと 昨日まで生きた証は刻めない 始めよう来世 僕たちこの先お先が真っ暗かな 分かりやすいものに縋り、崇めるんだ 虚像に偶像なんでも凶器になる ただ嘯く(うそぶく)刺激が脳に突き刺さって 有り余る時間を注いだ この運命に抗えと 頭だけ虚実と分かって飾ったって 欠けた器戻しきれないように 何回も運命を選んで歪んだ日々の中に 協調だのなんだの愛だのかんだを並べて 不完全情念を燃やし挑んだラストシーンは 簡単に悟った無情を孕んだ さよなら現世 私がこの先一体どうなるかは この一挙手一投足にかかっている。 そろそろおやすみ まったくどうかしてる 僕ら暗い宵闇の中にいる
作品ID:
D267
クリエイター名:
薄夏 候
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作品ID:
D249
クリエイター名:
melon pan
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作品ID:
D204
クリエイター名:
hina
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作品ID:
D183
クリエイター名:
ONE★
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作品ID:
D016
クリエイター名:
彩羽
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作品ID:
D005
クリエイター名:
satori
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作品ID:
E297
クリエイター名:
和上 京鈴
無し
最初に自ら命を絶ったのは、社会人2年目のときだ。 いわゆるブラック企業と呼ばれる所で洗脳されながら必死に働き、身も心もぼろぼろになったある夜。 残業中にふと窓を開けて、星の見えない眩しいビル群を見上げながら空を舞った。 どこからか手拍子が聞こえてきた。 次に生まれたとき、5歳の頃に前世の記憶が蘇った。 この人生では15年で命を絶った。 好きな子に告白したら断られ、学校で囃し立てられたからだ。 そして再び、手拍子が鳴る。 「また生まれ変わったのか……」 僕は、何度終わりを選んでも新たに始めることができると知った。 そこで、出会った人も自分の顔も環境も、気に入らないことがあればすぐにやり直しを選択するようになった。 一度躓くと、続けようとは思わなかった。 ただ完璧な一生を送りたい一心で、輪廻に身を委ねる。 しかし何度目からだろう。 その手拍子は、命を繰り返す自分を喝采しているわけではないと思い始めた。 僕の死を待ち望んでいる。 手拍子は滑稽なループへの誘いと哀れみの象徴。 そう確信した僕は、運命に抗うことにした。 けれど、懸命に過ごした生涯を終えても、再び命を与えられた。 死ぬ、生まれる。 死ぬ、生まれる。 僕は完全にこの呪いから抜け出せなくなった。 時代が移り変わっていく中で、僕の魂だけが変わらない。 それが辛くて苦しくて、僕は救いを求めるように煙草の煙を空に向かって吐き出した。 ゆらゆらと昇っていくそれは、自分が焦がれ続けた自由を手にしているようで、羨ましくて恨めしい。 僕の「人生」は、一体いつになったら終わりを迎えるのだろう。 過去も現在も、そして未来でも、記憶は受け継ぐのに器だけ何度も新しくなる。 まるでツギハギだ。 胸が張り裂けそうに痛い。 その不快感を少しでも和らげようと、僕はもう何度目かもわからない道を選択した。 窓枠に足を掛ける。 空を見上げる。 ついに星が見えた。 「……まったく、どうかしてる」 手を伸ばしたところで届かないとわかっているのに、それでも希望を捨てきれない。 この空はかつての僕を覚えているだろうか。 いいや、そんなわけがない。 涙で視界が滲む。 天へと向かう煙が光に見えた。 手も足も、もっと自分のために使えたら良かった。 最初から抵抗すれば良かった。 抵抗した上で、生きれば良かった。 けれど、気づいたときには何もかも手遅れなのだ。 お前ならわかってくれるだろう? 「――さよなら」 手拍子。
作品ID:
E282
クリエイター名:
zoo
無し
4歳の時、僕は天使に会った。 「ねぇ、質問があるんだけど」 「なぁに?」 「あなたは、ジャンティー?」 ! 僕は、ゆっくりと頷いた。 「本当に!? やっと転生してきたのね!」 嬉しそうに飛び跳ねる彼女。 「あなたが天寿を全うしたら、天界に連れて帰るわね!楽しみ!」 それからというもの、彼女は毎日 僕に会いに来た。 彼女は「天界」に住んでいる、アペレースという天使だった。 彼女の話によると、 僕はもともと、ジャンティーという天使で、アペレースとは幼なじみだったらしい。 ある日、人間の女の子に恋をし、逢瀬を重ね、ついにはその子を妊娠させてしまった。 神の逆鱗に触れたジャンティーは、人間界に堕とされたが、その後、2人には子供も生まれ、人間界で幸せに暮らしたそうだ。 ずっとジャンティーに恋心を抱いていたアペレースは、いつか転生してくるはずのジャンティーを待つことにした。 アペレースは、ジャンティーの直列家系で生まれた男の子に、「あなたは、ジャンティー?」と聞き、違えば、その命を奪い、リセット。次の男児誕生を待った。 そのせいで、直列家系の男児は皆、5歳までに亡くなっていた。 しかし 僕は、死ななかった。 10歳頃から、すでに親戚内では「特別な子」として扱われていたが、20歳になった頃には、僕は新興宗教の教祖となっていた。 「私は、天使の生まれ変わりです」 大嘘だけどね。 僕は、ジャンティーの転生者なんかじゃない。 4歳の時。 アペレースの口から「ジャンティー」という名前を聞かされ、蘇った前世の記憶。 それは、「あなたは、ジャンティー?」と聞かれ「違う」と答えた結果、幼くしてアペレースに命を奪われた、男の子の記憶だった。 僕は、リセットされた哀れな男の子の転生者だったのだ。 あの時。 「違う」と言えば殺されることは理解していた。 だから 嘘をつき、まんまと生き延びた。 しかし最近 宗教信者の増加と共に、アペレースの顔が、少しずつ曇ってきた。 「あなた、本当にジャンティー?」 「疑うのか!? 僕はこんなに…君を愛しているのに!」 「…だったら、質問に答えて。人間界に堕とされた時、代償として足を奪われたわよね?…右足だった?左足だった?」 ! これはもう、イチかバチか…! 「右足、だったよね?」 その瞬間、アペレースの顔から、表情が消えた。 「…両足、よ」 「そんな…!」 ひっかけじゃないか! 「さよなら」 ! あぁ…さよなら、現世。 来世はせめて、もっとマシな人生を――
作品ID:
E201
クリエイター名:
紅石
無し
『リセマラ』と辞書で引けば二つの意味が書かれている。 一つは、ゲームで欲しいキャラがでるまでリセットを繰り返すこと。 一つは、試験管ベビーで欲しい人間ができるまでリセットを繰り返すこと。 一つ目の意味などもう昔の話で、今『リセマラ』と言えば二つ目の意味でしかない。いや、父さん母さんたちからすれば、試験管ベビーだってゲームなのかもしれない。 「おはよう、母さん」 低血圧のぼんやりとした声、眠たげな顔と下がり眉、黒い前髪の下から瞳を覗かせれば、母さんは嬉しそうに笑う。私はほっと胸を撫で下ろした。 薄青のペディキュアを見せつけるように素足で部屋の中を歩く。机の上に用意されている朝食は少なめに、ブラックコーヒーとフルーツとサラダ。 スリッパを履きたい。カフェオレが好き。朝食はしっかり食べたい。それらをすべて我慢して、私が朝に弱い気だるげな男を演じるのは、ひとえにリセマラされたくないからだ。 試験管ベビーで産まれた私はいつだって舞台上にいるような心地で、台詞一つ、目線一つ、一挙手一投足何か一つでも間違えればおしまい。観客席に座る母さんが『役者を変えて』と手を叩けば、明日舞台に立つのは違う男だ。今日も生き延びることに神経をすり減らす。 実はね、と話し始めた母さんはいつもの母さんではなかった。私はあの表情を知っている。あれは、私が初めてここに来たときに見せた顔。母さん好みの男が産まれるまでリセマラした時の、満足げに微笑む顔。 母さんの視線の先で扉が開く。一人の男が扉を開けてこの部屋に入ってくる。 貴方の弟よ、と母さんが微笑んだ。 憂いと色気を絶妙に兼ね備えた顔、形の整った下がり眉、艶のある黒髪の下に睫毛の影が落ちる瞳。 「はじめまして、兄さん」 心地好い低音の声が私の耳を侵食する。眩暈を覚えてぐらつく視界が下がれば、白い足の指先で澄んだ湖のような色が彼の爪を飾っていた。 誰が見ても同じことを言うだろう。彼はすべてにおいて私より優れている。そして私は絶望する。 兄弟と言っているが、そのうち彼だけになることを知っている。なぜなら私は経験しているから。リセマラの末にここへ来たとき私は弟で、ある日一人っ子になり、そして次は私が兄になる。 蹴落とさなくては。 私は舞台を降りたくない。こんなラストシーンなど認めない。主演が一人だけならば生き残るしかない。 朝日が差し込む宵闇の中、私は生を抱いて足掻く決意をした。
作品ID:
E094
クリエイター名:
Neu
無し
なあ、其処に愛はあったかい? 君が求めた幸せは、まるで儚い夢だ。 現実は惨めで残酷だと知っていて尚、絶望に向かう君は、なんて醜い怪物だろうね。 そんな君を愛せるのは、この僕だけだと。 いい加減に認めておくれよ――。 * 足先の無い死体が積み重なっていた。 腐り切って骨だけの者。 腐敗した肉から所々に白骨が覗く者。 原形もわからぬ程に様相の崩れた者。 まだ腐り掛けの比較的新しい者。 死体、死体、死体死体したいしたいシタイシタイ、死体の山だった。 目が覚めて鼻に付いた異臭は嘔吐を誘う。 寝惚け眼で辺りを見渡せば、そこら中に足首から下が転がっていた。 思わず「ひっ」と声を上げようとして、呻き声しか出ては来ない。 そして、身動きすら満足に取れなかった。 どうやら口を何かで塞がれ、肢体を拘束されているようだ。 不意に、きぃきぃ、と音が響き渡り、死体の山の向こうから何かがやって来るのを察する。 タイヤが地面に擦れる音だと解ったのは、車椅子がゆっくりと此方に向かって来たからだ。 「嗚呼、気付いたんだね」 車椅子には青年が座っていた。 その足元には足首から下がなく、ズボンの裾がダランと不自然に垂れ下がっている。 低い声は渋い男性を連想させるのだが、何処か幼く感じられた。 転がる足を気にせず轢き潰し進み、僕の前で車体を止めた彼の口元が笑みを象っていく。 この異様な空間の中にはそぐわない、あどけない表情だった。 「君の足は符合するかなあ?」 おもむろに車椅子下の収納部から何かを取り出した男は楽しそうに僕の体躯を頭から轢いた。 車輪と車輪の間に挟まれ更に動けなくなる。 「安心して。足さえ手に入れば君の命に用はないから」 ぎぃこぉ、ぎぃこぉ、とくるぶしから不穏な音と共に味わったこともない痛みが走る。 「生きていればの話だけどね?」 可愛らしく笑う声に、肉を断ち切る音と呻くしか出来ず悲鳴にもならぬ僕の惨めな声が交じる。 ぎぃこぉ、ぎぃこぉ、と引いては押され、段々と僕から離れていく足を意識しながら意識は途切れた。 * 気付いた時には、また手遅れだった。 からん、と落ちた鋸には真っ赤な血がべったりと付着している。 絶命している男に見覚えはない。 自分の中にいる少年の仕業だと解ってはいても、どうにも出来ない歯痒さと、償い切れぬ罪の重さに気が狂いそうだった。
作品ID:
E075
クリエイター名:
伊瀬 ハヤテ
無し
はじまりはとっさについた嘘だった。 飼い犬が見つからないと泣き叫ぶ少女に対し、信じていればまた会えるよと幼い僕は微笑んだ。 安心したように涙を拭う少女に別れを告げ、轢かれて死んだ犬を誰にも見つからないように山に埋めた。 信じ、願い、そして祈る。 そうすれば深い悲しみに溺れることも、絶望することもない。 僕はたくさんの人を救いたかった。 愛するものに裏切られた男。生まれによって迫害を受ける女。 子を失った親。親に捨てられた子。 誰からも認められなかった若者。誰からも疎まれる老人。 彼らを救うために僕は嘘をついた。 自分は神の生まれ変わりだと。 彼らは僕に縋った。絶望を嘆いた。許しを請いた。 「信じなさい。願いなさい。そして、祈りなさい。 そうすればあなたは救われる」 そう言って頭を撫でると彼らは母に抱かれた幼子のように、安らかに泣いた。 次第に僕を訪れる人は増えていった。 ある者は共感を、ある者は同情を、ある者は慈しみを求めた。 僕は求められるままに嘘をつき、彼らは僕を信じた。 世間は僕たちのことを頭のおかしい集団だと笑った。 しかし、多くの人間と対峙し、救う日々の中で僕は気がついた。 これほど病み、憂い、悲しむ人ばかりを生むこの世の方がおかしいことに。 「この世は狂っている。だからあの世で平和に生きよう」 死を恐れる老婆に対し、僕はこう嘯いた。 あの世があるかなんて知らない。だけど老婆は安心したように逝った。 この嘘をきっかけに全てが壊れた。 あの世の存在を信じた信者たちが一斉に身を投げた。 毒を飲み、首を吊り、空へ飛んだ。 「あの子が待ってるから」 かつて僕の前で泣き叫んだ少女は、笑って道路に飛び出した。 血に染まる彼女を見下ろし、僕は呟く。 「いつから嘘だって気づいていたの?」 しかし、返事はなかった。 世間は僕を許さなかった。 自殺教唆、洗脳、大量殺人。 連日報じられる僕という存在に多くの人間が恐れと怒りを覚え、わずかな人間が希望をみた。 世界は僕に注目した。 カメラに囲まれながら、僕は悟っていた。 謝罪の言葉も懺悔の行動も意味はない。 なぜなら人は真実がどうであれ、信じたいように信じるからだ。 そう彼女に教わった。 ならば僕は最後まで救おう。この狂った世界に生きる者たちを。 僕自身を。 「私は神の生まれ変わりです。今日はみなさんにお伝えしたいことがあります」 脆く、美しい世界の行方は。 この一挙手一投足にかかっている。
作品ID:
E028
クリエイター名:
猫衣 林薙
なし
僕は今日、処刑される。 「人間を凍らせた罪」で。 僕は精霊で、モノを凍らすことが出来る能力が与えられていた。どうして僕だけ、こんな力なんだろう。精霊は他にもいて、手品のような魔術で子供たちを喜ばせる者、未来を告げ良い方向へ人間を導く者、綺麗な花を生み出し人の心を癒す者。 皆、人間の為に自身の力を公使し、人間から愛され、求められていた。 皆、自分の居場所がある。 だが、僕だけは違った。モノを凍らせる力なんて、何の役にも立たない。 誰からも必要とされない。 僕は次第に他の精霊たちと距離を置き、人間のことも嫌いになっていった。 そんなある日、彼女に出逢った。 彼女はまだ小さくて、川に流され溺れていた。死に物狂いで水をかく無様な姿。 人間ごときが生きようが死のうが、僕には全く興味が無かった。だが、力尽きて水面から顔面が沈む間際、僕と目が合った。 そして彼女は「助けて」と最後の声を振り絞ったのだ。初めてだった。人間から求められるのは。この感情は何? 僕は無我夢中で凍りの力を発動させた。 川の水は瞬時に凍り、彼女は助かった。 彼女の唇が紡ぐ感謝の意は紛れもなく僕だけのもので、それはキラキラ光る宝石のようだった。彼女は僕を慕い、よく川へ来るようになった。凍りの力で、彼女が好きだと言った動物や花を創ってやった。 僕の凍りは溶けない。 川辺には僕が創った凍りのオブジェがひとつずつ増えていく。彼女は向日葵のような明るい笑顔で微笑んだ。 ある日、成長した彼女に人間の恋人が出来た。当然だ。僕は所詮ただの精霊で、人間と結ばれることなんてない。 どうしてそんな簡単なことを忘れてしまっていたんだろう。彼女は、この川に寄り付かなくなった。 寂しかった。独りには慣れていたはずなのに、前よりもずっと寂しい。 彼女のために創った凍りのオブジェが溶けていく。オブジェが無くなると、もっともっと寂しくなった。僕は、彼女に似た人間をオブジェにした。 久し振りに彼女がやって来た。 恋人を連れて。僕のオブジェを見た彼女が悲鳴をあげる。どうして?僕が創った凍りの傑作。いつも喜んでくれたじゃないか。 あまりにも哀しそうな顔をするから、二人揃ってオブジェにしてあげた。良かったね、これで君たちは永遠だ。
作品ID:
E014
クリエイター名:
憂井 ヨシノ
無し
ある所に不幸な子がいました。 消えろブス。 クラスで一番人気の子に言われ少女は俯きました。 この教室に少女の味方などいなかったのです。 先生も知らん顔。 「近頃、子供が不審な男に襲われる事件が多発しています。皆さん気を付けて下さいね」 と良い教師を演じているのでした。 彼女は帰り道ふと殺人鬼のことを思い出しました。 子供を生きたまま食べる。その行動は理解に苦しむものでした。 思えばこの公園も犯行現場の一つでした。 「何してんのアンタ」 「―!」 「えー何なに……『不幸な私を殺して下さい。一週間後に廃倉庫』」 公衆トイレの裏に書いていた便りを人気者に見られ、少女は逃げ出しました。 少女は翌日から学校へ来なくなりました。 代わりに一週間後、約束の場所へと現れました。 しかし殺人鬼は来ませんでした。 姿を見せたのは別の男たち。 男たちは少女を殴り、押さえつけて服を破りました。 少女は泣き、男の一人が言いました。 「お前はやんねえの?」 「ウチは赤ちゃんいるから」 人気者の膨れたお腹。 男は頷き、続きを始めようとしました。 しかし止めました。入り口に知らない人物が立っていたからです。 彼は全身傷だらけで蒼白の、まるで心を失ったかのような表情の男でした。 彼は呟きました。 〝やっと見つけた〟 と。 同時に彼は男たちへ刃物を突き立てました。 「本当に来てくれた……」 少女は嬉しそうに呟きました。 しかし次の瞬間に男が刺したのは別な人物でした。 ぱっくり割れたお腹からは六ヶ月目の赤子が顔を出しました。 男は赤子を恍惚的な表情で咀嚼しはじめました。 あまりの光景に少女は逃げ出しました。 「私の……赤ちゃん……」 彼女は意地悪でした。 どんな時でも自分が幸せならそれで良かったのです。 彼女は死にながら夢を見ました。 元気に笑う我が子の夢です。 彼女は地獄に落ちました。 切られて刺されて千切られて。 心を失うほどの痛みでした。 しかしどれだけ罰を受けても我が子は忘れられません。 会いたい……。 会いたい。 会いたい! 会いたい‼ 彼女は有り余る時間を注ぎ探し続けました。 何度も何度も、生まれては死んで、生まれては死んで。 どれだけ食っても我が子には巡り合えません。 『不幸な私を殺して下さい』 どうせまた会えはしないだろう。 そう思いながらも待ち合わせ場所へと向かいました。 そして呟きました。 〝やっと見つけた〟 と。 ある所に不幸な子がいました。 彼女は今もずっと、闇の中を彷徨い続けています。
作品ID:
E002
クリエイター名:
安城 和城
リセマラ卵
こつこつ、しゃりら。 こつこつ、しゃりら。 二人が暮らすマンションのダイニングに、そんな音が響き続けていた。 テーブルには、山と積まれた十個入りのリセマラ卵のパックと、卓上ミラーが一つ。 彼女は卵を割っては、期待と共に鏡をのぞき込む。 § 深夜零時、日付けが変わった瞬間に、彼女は近場のコンビニでその大量の卵を受け取り、荷物運び兼運転手として駆り出された僕は、それを何往復もして部屋へと運んだ。 リセマラ卵。正式には「フェイスエッグ」という名前のそれは、20XX年に登場した「人の顔を変える」夢の商品だ。その卵を割ると、目、鼻、口、耳をはじめとする顔の各部位の形状や色が、ランダムで変更される。 幾度もの規制と緩和の末、「購入と使用は誕生日の一日に限る」ということで落ち着き、そして生まれたのが、今僕の目の前で繰り広げられている光景――つまりは、「誕生日に大量のリセマラ卵を買い込み、自分が納得する顔になるまで延々卵を割り続ける」というものだった。 時折、彼女は短く僕に声をかける。 「どう?」と。 僕は答える。「いいんじゃない?」と。 その言葉の意味するところは、開始から十数時間を経た今となっては、「(もう)いいんじゃない?」というものに変わっている。 こつこつ、しゃりら。 こつこつ、しゃりら。 彼女がテーブルの端で卵を叩く音と、お決まりの演出音。卵の割れた部分からまばゆい光が漏れ、彼女の顔が変更される。 こつこつ、しゃりら。 こつこつ、しゃりら。 眠くなってきた。僕だってずっと寝ていないのだ。 向かいのイスに腰かけている彼女は、まるでスランプに陥った昔の文豪みたいに、卵を割って鏡をのぞき込んでは、納得できず殻を背後へと放り捨てていく。 そんな彼女の姿が、だんだんおぼろげになってきた。 「どう?」 次に彼女がそう訊ねてきたとき、僕はテーブルに伏せって眠ってしまっていた。 § 目覚めると同時に、くしゃみ。冷たい風が吹き込んできていた。 ベランダへと続く窓が、開け放たれている。 部屋に彼女の姿はなく、テーブルには、口紅で短い言葉が記されていた。 『リセットする』 それが彼女の遺言だった。