鏡のように互いに正反対の身なりと性格を纏った二人の“大臣”は恭しく私の頭に真っ赤に輝く王冠を載せた。 「世界を統べる王となるべくあなたはこの世に生を受けたのです」 私を産んだ“母”が十数年以上も続く繰り言を再度繰り返した。 「お前に世界を託すことに不安を抱く者は全て敵と見なせ」 私を育てた“父”が十数年以上も続く繰り言を再度繰り返した。 嗚呼、私は遂に今までひた隠しにされてきた私という存在をこの世界に、私のためだけに創られ、 私だけのために存在するこの世界に、高らかに宣言する時が来たのだ。 私の思うが儘に蹂躙し、私の生を歓喜し、私の死を慟哭する世界に作り変えるのだ。 人々はその身をもって知るのだ。足元の大地の砂粒一つたりとも自分のものではないことを。 己の肉体に流れる血も、墓石の下に埋められた亡親の遺体が着ている服の糸一本も、全て私のものであるということを。 熱狂する大衆の声が何層にも重なり合って私の耳を聾するだろう。 幾つもの目が私の一挙手一投足を見逃すまいと私の視界を占めるだろう。 何万本もの腕が私に近付こうとして花束を振り回して私の鼻腔を刺激するだろう。 嗚呼、それを想像するとどんなに私の心が沸き立つことか。 声も、景色も、匂いも、私にはそれを現実にできる力があるのだ。 跪け！ 平伏せ！ 私を崇めよ！ ありとあらゆる言葉をもってしても、私の偉大さを語り尽くすことは出来ないことに慄くといい！ 私はお前たちの上に立つためだけに生まれ、生き、そして死ぬのだ！！ 私の世界のために、私は闘うのだ。