うるう年が嫌いだった。 2月29日の自分の誕生日には毎回この世界の理不尽さを思い知らされる。 多種多様な有能力者がほとんどの中無能力者として生まれ、散々蔑まれ、孤独な日々。 「もう最後にしよう」 そう語り合った無能力者の印である手首のナンバーを見つめる。 不意にニヤつきたくなる思いを胸に留め、夜のネオンを突き進んだ。 私たちの話はつい昨日の2月28日の朝に始まる。 突如として鳴り出した放送には皆驚いたと思う。 「明日、世界が終わります。無能力者だからといって差別される日々がようやく終わるのです！では、失礼」 音声だけであったらこんな話、誰も信じるわけがない。 しかし、現実は違った。 時を刻むのをやめたかのように動きが止まった人々の焦点を合わせようとしない無力な目。 その後まるで仕組まれていたかのように私たち無能力者7人は集まった。 「えっとつまり梨沙ちゃんの他人の願いを叶える力が僕ら7人に発動した結果、矛盾のある7つの願いを手っ取り早く叶えるのが世界を終わらせることだったんだね。なるほどなるほど〜」 一刻を争う事態だというのに笑顔を崩さない星郁人は本当に彼らしいななどと呆れを通り越して感心している場合ではない。 梨沙というのは郁人と私が入っていた孤児院の院長の娘でよく3人で遊んでいた。梨沙は本当に心優しく人懐っこい性格だった。しかし4年前の2月29日に突然命を絶った。 「無能力者を演じていたのか…そんな。」 梨沙と同じ学校に通っていた瑞樹が絶句する。無能力者を演じていたのは事実だった。ありもしない0を手首に刻んでまで演じていた。それもこれも私たち無能力者を気遣って。 願いを叶える能力は大きな能力なので一回使うと命を落としてしまう。 裏を返せばこれだけ大きな能力の力を私たち無能力者の力で止めようとしているわけだ。 「何弱気になってんのよ。王室にある能力の源泉の瓶の蓋を閉じればいいだけの話でしょ。どっち道29日中にやらなきゃ終わるんでしょ、世界。」 「でもマリちゃん、瓶の位置わからないんですよね？無謀すぎるのでは…」 一座が静かになる。ここは私が何か… 「位置わからないどころかあるかどうかもわからない感じ。でも何もしないよりはした方が良いでしょ？絶体絶命くらいが面白いよ、きっと。」 「でも…」 それでもまだ不安げな彩の肩を私は叩きこう言った。 「3月1日に絶対また会おう。2月29日は世界を直す日だから。」